探究活動

科学知「遺伝子解析実験講座+遺伝医学と生命倫理講座」

探究活動

8月24日・25日の2日間、理数キャリア1年生19名の生徒が、科学知講座「遺伝子解析実験講座+遺伝医学と生命倫理講座」に参加しました。

1日目は、東邦大学理学部教授の佐藤浩之先生に「遺伝子でわかる、あなたの得意な陸上種目」というテーマで、遺伝子多型分析の基礎の実験講座をしていただきました。

最初に、佐藤先生から遺伝子DNAについての講義を受けました。遺伝子DNAは生物の設計図です。ヒトゲノムのDNA配列の99.9%は共通で、残り0.1%の違いが個人差となります。顔や体型、運動能力、知的能力、感性の鋭さ、病気のなりやすさなど、生まれつきの「素質」や「才能」は、理論的にはすべてDNAを分析すれば分かります。もちろん、これらの形質の中には環境要因の影響が大きいものも多く、直ちに遺伝子型が表現型と一致しないことも多くあります。
今日の実験では、速筋(早くて強い動きをする筋肉)にあるαアクチニン3というタンパク質の遺伝子を調べて、自分の筋肉が遺伝的に陸上競技のパワースプリント系種目に適しているのか、持久系種目に適しているのかを調べます。遺伝子情報は究極の個人情報なので、実験の前に実験の趣旨を十分説明して、本人・保護者の承諾を取ったうえで実施しました

自分のほほの内側から採取した上皮細胞から遺伝子を抽出し、PCR法で遺伝子を複製します。実験にはマイクロピペットという微量の溶液を量る道具を使います。時間や温度管理にも注意を配りながら遺伝子増幅実験を進めます。制限酵素の試薬を加えることでDNAを配列特異的に切断して、電気泳動によりDNAの分子サイズを確認することで遺伝子型を調べることができました。テレビでもみたことがある科捜研などで行われていた実験を、実際に自分たちでも行うことができて、遺伝子分析を身近に感じることができました。

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2日目のテーマは、『究極の個人情報;遺伝子診断の手法!遺伝カウンセリング・ロールプレイ』です。

最先端の遺伝子科学、DNAを解析すれば何でもわかるのか?ネット上には「遺伝子診断」や「遺伝子検査」のサイトがけっこうあります。
でも、実際にはどうなのでしょうか?講座の前に、まずは自分たちでネット検索して、遺伝子診断に係わるキーワードや現状、その問題点について調べました。

いよいよ講座が始まります。今日の講義は、認定遺伝カウンセラーとして活躍をされている田村智英子先生が担当してくれました。
まずは検査や診断が可能な「単一遺伝子病」のお話しです。遺伝性の疾患がどのような仕組みで遺伝するのか。遺伝子変異と病気発症のメカニズム、予防手術、多因子疾患の遺伝子検査・・と、遺伝子診断と治療の現状や倫理面の課題について、先端医学の現場の話を聞きました。

次に「発症前の遺伝子診断を受ける?受けない?」をめぐる話です。「出生前診断」妊娠、出産の裏に潜む、染色体異常や子供の障害に対する不安。「遺伝性アルツハイマー病」結婚前の配偶者となる相手が将来アルツハイマー病を発症するのかという不安。検査によって事前にいろいろな病気がわかるのだったら、あなたはどうしますか?複数の遺伝的要因や環境要因が複雑に絡み合って発症する「多因子疾患」の遺伝子検査についてはどうですか?こうした難しい選択や正解のない問いについて、それぞれの立場になりきってやりとりする「ロールプレイ」という手法で考えてみました。

結婚目前に父の遺伝病に悩む姉妹、恋人の2人とそれぞれの母親の間で遺伝子検査の受診の是非を問いあう、などのシチュエーションをもとに、それぞれの役になって演じます。自分自身の考えとは違う立場で話す難しさ、思わず相手に説得されて反論できなくなったり・・人のやりとりを見ながら、あらためて考え込んでしまいます。

最初に調べたこと、感じたこととはずいぶん印象が違ったことが多かったと思います。現在の先端科学でも曖昧だったり、信頼できないものも多くあります。なかには、ある程度はっきり結論が出る場合もあります。その結果をどう捉えるのか、利用するのかしないのか、簡単に答えは出ないのだと感じました。それでも考えることはとても大切です。

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